■エッセイ『懐かしい時の空間物語』 記事一覧



 

麗しい88
シンプルなデザインは日本製かドイツ製を想像される方が多いと思います。
しかし、華やかな印象のあるイタリアメーカーにもシンプルなデザインはあります。その中でも私のお気に入りは、アウロラの88(オッタントット)。
アウロラ特有の流れる様な曲線美を持つクリップと肉付きのよい丸みのあるボディは、どことなく色気を感じます。
そんな印象が私の中であるせいでしょうか。このペンを眺めていると『男装の麗人』という言葉が浮かんできます。タキシードに身を包んだ美しき女性。芯の強い、凛とした姿を連想してしまうのです。
シンプルながら芯から醸し出す美しさ、色気を纏った88には、この言葉がピッタリのような気がしてなりません。
赤や黄色、様々なペンが並ぶペン棚。そこに並んだ黒を纏ったこのペンに目が自然と引き寄せられてしまう私は、そんな女性像に憧れを抱いているのかもしれませんね。

(S)


人気のヒミツ
パイロットのキャップレスという万年筆があります。

一見ノック式のボールペンにも見えるスリムで変わった見た目の万年筆の大きな特徴は、
その名の通り万年筆を構成する重要な役割を担うキャップが無いことです。
万年筆のインクは水性なので、キャップでペン先をカバーをしなければインクが乾いてしまいます。

キャップレスは、軸の尻側を回転もしくはノックするとペン先が出し入れされ、同時に開閉するシャッター式のカバーを内蔵したことによって、まるでボールペンのようにスマートに使える画期的な万年筆です。

小さなペン先はほどよくしなり、通常の万年筆と変わらない素晴らしい書き心地と使い易さ、その精緻な構造の面白さから、1963年の発売から現在まで国内外に多くのファンがいる人気モデルであり続けています。

いつものように、颯爽といらしたH様もそんなファンのおひとり。
高校生の頃ちょうどキャップレスが発売され、その斬新な万年筆に魅了されたそうです。しかし当時は買うことができず、ずっと思い続けて社会人になり、ようやくご自身のお給料で買うことが出来たとのこと。

すでにたくさんの万年筆(もちろんキャップレスも)をお持ちのH様ですが、その日は高校生の頃に発売された思い出のペンがふと気になって、お買い物に来てくださったのでした。

発売以来改良を重ねて仕様もサイズも変わってしまった現在、一番初代モデルに近いサイズのデシモを選ばれたH様。試し書きをされた控えめな黒のシンプルなボディが気に入られたようで、お買い上げ頂けるとのこと。
ありがとうございますと言いかけたところで、ふとサイズは後期のものだけれども、こんな柄もあるのですが、とついお見せした美しい絣柄のモデル。
お手にとってううん、と唸って、これはとってもカッコいいね・・・コーヒータイムに悩ませて、とH様。
ああシマッタ、悩ませてしまったごめんなさい!と心の中で呟くわたし。
いつもの通りコーヒーを召し上がってお寛ぎのあと、かっこいいからこれにする!と、後にご覧頂いた絣色のペンに軍配が上がったよう。さすが、お目が高い。

思い出のものと違うけれど、こんなに素敵なものを手に入れられて、正直すごく嬉しい!と高校生のような眩しい笑顔でおっしゃってくださったH様。

高校生のH様もさぞかしおモテになったのだろうなあ、と
人もペンも新旧問わず、時代に流されない人気の秘密を垣間見た一日になりました。

またのご来店、お待ちしております。
(F)







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