■エッセイ『懐かしい時の空間物語』 記事一覧



 

うつくしさを保つ
冬に剪定をした庭の百日紅に、のびのびと健やかな若葉が茂っています。
ご来客の合間に、元気よく伸びた木賊の手入れをしたり、テラスの大きなガラス窓を磨いたりするのも、書斎館スタッフの大切な仕事の1つです。
開店から16年過ぎ、年季の入った設備もありますが、心地よい空間は相変わらずでありたいと心掛けています。

万年筆はボールペンなどと違って時々はお手入れが必要な筆記具です。
インクの詰め方から水洗いの方法まで決して難しくはありませんが、確かに知らないと出来ないことではあります。

はじめて万年筆を手にされる方へはもちろん先のようなことをお伝えしておりますが、まず最初にお話することは、インクを入れたらなるべく毎日使ってください、それがペンの一番のお手入れです、ということです。

万年筆のインクはほとんどが水で出来ています。インクを詰めて使わずに置いているだけでも少しずつ水分が飛び、乾いてしまいます。
一、二回くらいでは問題ありませんが、入れっぱなしの乾きを度々繰り返してしまうと、インクの出が悪くなってしまったり、書き味が悪くなってしまったりするトラブルが起こることがあります。

一番のトラブル防止はペンをできるだけ使ってインクの流れを常にスムーズにしてあげる、それに尽きます。
使っていれば、その日のペンの機嫌もよく分かりますし、新しいインクを補充しようかなと思ったり、ときどきは洗おうかな、と気付いたりするものです。何より万年筆は育つ筆記具ですから、たくさん愛用することが、全てにおいて良いことに繋がります。

丁寧に使いこまれた万年筆は、持ち主の気配を蓄え、いつまでもあたたかく輝き続けると思います。

住居もお店もそう、手入れをするから心地良さが保たれます。手にしてくださったペンも同じく、たくさん「お手入れ」して欲しい。そんな事を思いながら、店の庭に今日も水を撒く初夏の一日でした。
(F)

職人の手仕事
3月にフランスのエルメスが表参道ヒルズと銀座で「エルメスの手しごと展」を開催しました。ご覧に行かれた方々多くいらっしゃることと思います。職人さんを近くで見られる貴重な機会と思い、足を運びました。

表参道では、鞄やスカーフ(エルメスでは“カレ”と呼ぶ、と恥ずかしながら初めて知りました)馬具に時計など、実際に職人の皆さんがデモンストレーションを行い、質問にも気軽に答えていらっしゃいました。
その時も職人さんの技術って凄いなぁ・・・とひとしきり感心しておりましたが、銀座のメゾンで、職人さんのドキュメンタリー映画を観て、また違った想いが生まれました。

ひとつひとつの品物に職人の方々が多くの時間をかけて、その仕事に誇りを持ち、職人にしか出来ない唯一無二の技術で素晴らしい品を私たちに贈って下さっている、そんな姿を見て、万年筆も沢山の職人の手しごとが支えている事を改めて思い出しました。

特に日本には豊富なペン先があり、そのひとつひとつは機械で作り上げる事の出来ない代物です。その小さなペン先にペン先職人の全てがつまっていて、軸もクリップもデザインにしてもそうです。万年筆一本に多くの誇りと魂が宿っているのです。

そう感じた時に、そんな素晴らしい品をお客様にご紹介しお届けできる事に感激とそして深い責任を感じました。


万年筆を紹介する者として、また使用している者として、職人さんの心と想いに報いるためにもお手入れをしながら末永く使わなければ!
(S)







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